合同会社オフィスキャンプ[A4(エーヨン)]
手と目が届く範囲でものづくり
デザインレーベル「A4(エーヨン)」の製品の魅力は、すぐにはつかみきれません。一見すると無機的ともいえる、洗練されたかっこいいプロダクト。でもそれだけではなく、使ったときの楽しさや心地よさを考えた細かなつくりこみから製作者の深い考えがふと伝わってきて、長く使いたくなるものばかりです。
監修しているのは、代表兼クリエイティブディレクターの菅野大門さん。デザイン、製作はもちろん、販売や卸し、商品の梱包や発送などの流通に至るまで、ものづくりのすべての工程に自らが関わり、少量から中量生産のプロダクトを発表しています。
いちじつでは、ランダムにカットされた多面体の木製ブロック「tumi-isi(ツミイシ)」など、さまざまなジャンルの職人と協働してつくられたアイテムをお取り扱いしています。
つくっては使い、使ってはつくりを繰り返して
A4のものづくりは、アイデアを形にして、菅野さん自身が家で使ってみることから始まります。
「いい色だけど家に置くと悪目立ちするなとか、家族が使う姿を見て所作が美しくないなとか。実際の生活で使ってみることで、『なんか違うな』と気づくことがあるんです」と菅野さん。
近しい人にも家で使ってもらい、そのフィードバックと菅野さんが「いいよね」と思う感覚を掛け合わせて、またつくる。この作業を、何度も何度も繰り返します。
ゴールは、納得できるクオリティと佇まいになるまで。試作から発売までに2年以上、なかには5年ほどかかっているものもあるそうです。
発売後も、お客さまの声を聞いて小さな改良を重ねます。長い時間をかけて、長く愛用してもらえるものをつくる——この思いを大切に、少量から中量生産ならではのものづくりをしています。
東吉野村に暮らし、働く
菅野さんが美術大学の学生だった2005年にスタートしたA4は、兵庫県神戸市、大阪府堺市を経て、2013年からは木の産地として名高い奈良県・東吉野村を拠点としています。
せせこましい都会から、広々とした環境でものづくりができる山奥へ。なんでもそろう便利さはなく、自分たちで工夫する東吉野村での暮らしは、菅野さんいわく“クリエイティブ重力10倍”!
「次の冬をどう乗り越えようかと考えているような環境と比べて、都会の暮らしは楽だったと気づきました(笑)。仕事のことだけを考えているわけにはいかないですが、生活を通じて思考が濃密になって、ものづくりの厚みが増していると感じます」と話します。
たとえば、「tumi-isi」は2008年頃には形になっていたアイデアを、東吉野のヒノキや杉でつくってみたところ相性がよかったことから、長い時を経て商品化に向けて動き出しました。座ることもできる本棚「bookstool(ブックスツール)」は、もともとは合板でつくっていましたが、今は吉野ヒノキ製です。
ゆっくりと時間をかけるものづくりも、「本物をつくる」というブランドのコンセプトも、東吉野村に暮らし、働くうちに明確に定まったものだそうです。
使う人もつくる人
東吉野村に越してきて10年。少しずつ事業の規模が大きくなり、近所の人に参加してもらうことも増えてきました。
ゆるやかにコミュニティが広がるなかで大切にしているのは、お客さまも含めて、関わるすべての人にきちんと対価を渡せる仕組みをつくること。つくる人も、売る人も、使う人も疲弊しない、ずっと続けられるものづくりを目指しています。
菅野さんは、「使い手も一緒にプロダクトをつくっている」と考えています。
時間をともにするうちに、傷が付いたり、色がはげたり、角がすり減ってきたり。何度も手で触れたからこそ出る味わいが、プロダクトの魅力をさらに深めるといいます。もしも、使い込まれた製品が中古市場に出回っていたら、買い取りたいと考えているそう。
「その製品は使ってくれた人と一緒につくったものなので、僕も愛でたいなと思っているんですよね」とうれしそうに話す菅野さん。あなたもA4のものづくりに、ぜひ参加してください。