higure
木をよく知る家具職人がつくる、暮らしの道具
「higure」は、静岡県で無垢材を使ったオーダーメイドの家具づくりを行う『金鱗』が、初めて立ち上げたオリジナルブランド。燻製器、燻製用チップ、木の器をはじめ、暮らしの中で使う道具を展開しています。
「higure」が生まれるきっかけになったのは、時代の変化によって抱えることになったある課題でした。
木材の家具づくりでは、まず板材を削り、厚みを揃える工程があります。そのときに木くずが出るのですが、以前はこれを酪農家の方が牛舎の下に敷くなどして再利用。さらに糞尿などと混ざることで発酵し、田畑の肥料になるという循環ができていました。
ですが、いまは高齢化といった理由で酪農家が減少し、この循環のサイクルが機能しなくなってしまったのです。
「産業廃棄物として捨てるしかなくなってしまった大量の木くずを、なにか別の形にして活用してもらえないかーーそのときに思い浮かんだのが、燻製用のチップでした」と話すのは、金鱗の3代目である石川智規さん。
当初はオリジナルの燻製器をつくることは考えておらず、別メーカーの燻製器と自社の燻製用チップを金鱗の店舗で販売するつもりだったそうです。
そのため石川さんは何度も展示会に通い、燻製器メーカーと卸販売の交渉を試みたのですが、アウトドアショップなどの専門店ではないと取引できないと、すべて断られてしまったといいます。
「すごくショックでしたが、であれば自分でつくってしまえばいいと思ったんです」
日暮れから始まる、higureの時間
気持ちを切り替え、燻製器から自分たちでつくることにした石川さん。これまで家具のデザインをすべて自社で行ってきましたが、燻製器は未知の領域です。そこで声をかけたのが静岡で活躍するデザイナー・西田悠真さんでした。
西田さんという心強いパートナーとともに長い時間をかけてかたちづくられていった「higure」。なかでもオリジナルの燻製器は、デザイン構想から完成までおよそ5年もの月日がかかったといいます。そのていねいなものづくりへの向き合い方から、「higure」というブランドへの思いの強さが伝わってきます。
「higureは『日暮れ』という日本語が由来です。一日が終わりかける、家に帰ってからのゆったり過ごす時間を大切にしてもらいたいという思いが込められています。そうした時間のために燻製器などの暮らしの道具を使ってもらいたいですね」
そう語る石川さん。この言葉のとおり、higureのアイテムが家時間をよりいっそう豊かなものにしてくれるはずです。