株式会社スタジオノート[studio note]
アートを身近に楽しむプロダクト
どんな発想でつくられたんだろう? 「studio note(スタジオノート)」のアイテムを眺めていると、そんな好奇心をかき立てられます。
手がけるのは、デザイナー、美術作家として活動する寺山紀彦さんです。企業から依頼されて行う製品ディレクションや内装デザイン、店舗アートワークなど、プロダクトデザインを中心に幅広く活動。近年は美術作家としても作品を精力的に発表しています。
studio noteの商品は、個人で活動してきた寺山さんが「自分の作風を知ってもらう、名刺代わりになるような作品を」とつくったプロダクトを製品化したもの。その数は多くはありませんが、暮らしのなかでアートの世界を楽しめる、唯一無二の魅力を放つものばかりです。
オランダでの学びがものづくりのベースに
寺山さんのものづくりの礎となっているのは、オランダのデザインアカデミーでの学びです。
祖父は日光東照宮の修復師、父は一級建築士という家庭で育った寺山さん。自然にものづくりの道を志してデザイン学校で学んでいた頃、オランダ発の「ドローグデザイン」の活動を目にしたことが転機となりました。
「当時の王道や流行から突き抜けた表現で、世界中のデザイン業界を驚かせる存在でした。学校で教わっていることとはまったく違う、既成概念を覆すような作品に衝撃を受けましたね」と寺山さん。卒業後にオランダへ留学し、ドローグデザインの創始者のひとり、ハイス・バッカー氏のもとで学びます。
「課題を提出すると、毎回、『もっとできる』って言われるんです。自分では完成と思っているところから、『その先があるのでは』と考えることを学びました。当時はおかしな方向に考え過ぎて、チーズで椅子をつくりました。臭かったなあ(笑)」
職人の技と新しい表現の融合
いちじつでお取り扱いしているのは、砂時計のガラスのなかで泡が生まれる「awaglass(アワグラス)」です。ひょうたん形のガラスは、日本に3人しかいない、砂時計専門のガラス職人によるもので、一つひとつ息を吹き込んで、手作業でつくられています。
ほとんどのプロダクトを自分1人の手で完成させる寺山さんですが、こちらは伝統的な職人の技術と寺山さんの斬新なアイデアのコラボレーションに、楽しさがあります。
「昔かたぎの職人さんで、最初は『水なんか入れたら、蒸気になって爆発するよ』とそっけなく断られました。それでも毎週のように足を運んで、こんな方法だったらどうですかと相談して、なんとか一緒につくってもらえることになりました」
スタート時、職人への依頼数は半年に20個程度でしたが、1カ月に50個に増え、今では多いときには200個ほどに。伝統的な職人の技と新しい表現が融合したawaglassは、2011年から10年以上続くロングセラーアイテムとなっています。
身の回りからもたらされる新しい発想
アクリルのなかに、かすみ草を1センチごとに並べた30センチ定規など、アイデアは独創的でありながら、ナチュラルな雰囲気がある寺山さんのプロダクト。散歩をしているときなど、身の回りからアイデアが浮かぶことが多いそうです。
「草木や花、人がつくれない自然のものを、人の手で整える。ずっとそんなことをやっていますね」
2008年の設立以来、自宅の一室を仕事場にしてきましたが、2021年に新たにアトリエを構えました。広さは8畳から176平米になり、ロケーションは山の近くから海まで歩いて5分の場所へ。アルバイトスタッフも加わり、“人と一緒に働く” という40代にして初めての経験を楽しんでいるといいます。
「環境が変われば、きっと表現にも変化がある。自分でも楽しみですね」と寺山さん。新しい発想のプロダクトに出合える日を、心待ちにしたいと思います。