ITO BINDERY
墨田区で長年営む製本会社
1938年、江戸川区のノート製本を手掛ける紙工所として歴史を刻み始めた伊藤バインダリー。57年にさまざまな製造業が集まるものづくりのまち・墨田区に拠点を移し、製本会社として商業印刷物、広告、チラシ、名刺などの製作を行っています。
2019年からは、ITO BINDERY(イトウ バインダリー)のブランド名で自社製品の販売もスタート。
「依頼をいただいてつくる本業にも誇りがありますが、それとは別にこれまで培ってきた製本技術を生かして『自分たちの製品』といえるようなものづくりをしたいと思いました」と、伊藤バインダリー3代目の伊藤雅樹さんは話します。
デザイナーとともに新たなプロダクトを開発
1年の製作期間を経てつくられた最初のオリジナルプロダクトは、メモブロックとメモパッド。墨田区が主催したものづくり企業とクリエイターを結ぶ事業で出会った「典型プロジェクト」のデザイナーとともに開発されました。
その数年後には、以前から伊藤さんが一緒にものづくりをしたいと思っていたデザインコンサルティングなどを行う「アッシュコンセプト」にデザインを依頼。そこで新たに生まれたノートブックもラインナップに加わりました。
こうしたプロダクトには、一般的に文具メーカーでは使われない製本技術が用いられていることも。
「そのために手間がかかり、大変な部分もたくさんあります。でもだからこそ量産品ではない、自分たちにしかつくれないものが生み出せると思っています。文具メーカーではないところを強みに変えて、自由な発想でものづくりをしています」と伊藤さん。
静かな美しさをまとうプロダクト
正確な直角、乱れのない側面——どのプロダクトも一つひとつのパーツが精密に計算されているからこそ成立するシンプルなデザイン。そこにあるだけで絵になるような静かな美しさをまとっています。
見た目だけでなく、使い勝手もしっかり考えられており、デザイナーや建築家などデザインに造詣が深い方たちにも愛用されています。
この美しく精巧なものづくりを支えているのが職人の存在です。
たとえば、束になった紙を裁断する機械の扱いひとつとっても、細やかな動作や的確な判断力が必要です。また、機械を使ったとしても一日でできる量は限られるため、スピード感も大切です。
これらを併せ持った高い技術を持つ職人がいるからこそ、人の心に響くようなものづくりができるのでしょう。
日本だけでなく海外も注目
高いデザイン性のあるITO BINDERYのプロダクトは、日本だけでなく欧米を中心に海外でも注目を集めており、ミュージアムショップやセレクトショップなどでも取り扱われているそうです。
とことん無駄が省かれた、高い製本技術がダイレクトに伝わる唯一無二のプロダクト。そこには、伊藤さんの「長く使ってもらいたい」という思いも込められています。文房具にこだわりがある人こそ、一度使ったらその虜になってしまうはずです。