POT Dye & Design
眠れる資源を有効活用
福岡県田川郡香春町(かわらまち)にある工房で、おもに植物染料を使って手染めした商品の開発や製造を行う「POT Dye & Design(ポットダイアンドデザイン)」。
地域で廃棄されたり不要とされたりするものに目を向け、それらを有効活用した、無駄のない持続可能なものづくりを提案しています。
不要だったものを、「未来に役立つもの」に生まれ変わらせたい
「捨てられてしまうものや、見向きもされていないものなど、眠れる資源を発掘して生まれ変わらせることで、“未来に役立つもの”になれば嬉しいです」と語るのは、代表の村上夕子さん。
村上さんはテキスタイルデザイナー出身。ファッションのものづくりの現場で、染色などの手しごとに携わる技術者たちを見て感銘を受け、いつか自分でも挑戦したいと思うようになったそうです。
その一方で、シーズンごとに次々と商品が生み出されるのを見るたびに、「果たしてこんなにもたくさんのものが要るのだろうか?」という疑問を抱くように。この経験から、一度立ち止まってものの必要性を考えると同時に「誰かやなにかのためになる商品を不用品からつくっていきたい」という現在のものづくりの根っことなる気持ちが高まったといいます。
こうした思いのもと、いちじつ でもお取り扱いしているパン用エコバッグ「パンヤノバッグ」を中心に、経年変化やメンテナンスを楽しみながら使える、「使い捨てないもの」の価値を提案し続けています。
環境にできるだけ負担をかけないものづくり
POT Dye & Designでは、原料、商品の製造過程、そして商品が人の手に渡ったあとまで、環境にできるだけ負担をかけないということを大切にしています。
たとえば商品の染めに使われる柿渋は、村上さんの地元でとれた余剰渋柿を有効活用し手づくりでできたもの。柿渋染めは薬剤や火を使わず、自然の力を利用して色を濃くしていく「太陽染め」という方法で、一枚一枚ていねいに手染めされています。すべての商品が環境に配慮した方法でつくられています。
人、もの、自然。すべてが循環する豊かな場
村上さんにお話しを伺うなかでとくに印象的だったのは、POT Dye & Designのものづくりに携わる人々に対する姿勢です。
「原料の収穫や、染め、縫製など、私たちに関わってくださる方たちにものづくりの楽しさを伝えたいですし、みなさんと無理なく楽しみながら働いていけたら嬉しいです。人と人とが関わり協力しながら、一緒に創造する豊かな時間を共有できるような......そんな場づくりをしていきたいです」と、朗らかな笑顔で語ってくれました。
人やもの、そして自然、すべてが好循環する環境で生まれる魅力的なアイテムたち。村上さんの思いを知れば知るほど、愛着を持って長く大切に使いたくなるから不思議です。